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ふるがる

偏在的放棄性脱力癖を誘発する二次創作ブログ

2024/02/06

《大雨》を見に上海へ・映画編

まえがき
先月、不思凡監督の新作映画《大雨》を見るために、2泊3日の上海旅行をキメてきました。無事帰ってこられたので、旅の感想を出国編・観光編・映画編の3つの記事に分けて書きました。
新作のネタバレが含まれる内容は映画編のみです。3月のTAAFで上映が行われるまでネタバレを見たくない人は、出国編と観光編だけ読むといいと思います。

出国編では、旅行までの事前準備がクソダルかったので苦労話をします。文章多め写真少なめ。
観光編では、映画以外の上海観光についての話をします。文章少なめ写真多め。
映画編では、映画の内容について話をします。文章多め写真も絵も無し。中国語の勉強が不十分なため内容の読み違いが大いにあろうかと思いますが、ネタバレを見たくない人は要注意です。

まえがきはここまで。ここから映画編。ガッツリネタバレしますので注意。

あのですねえ……。映画、めっちゃ良かったです。DAHUFAほど私にとって完璧な映画は他にないですが、その次に良い映画ですこれは。
正直なところ、予告編を見た時点での期待値はそれほどでもありませんでした。話の軸が擬似親子の感動系っぽかったので、安易なハッピーエンドになる作風でもないしそうなっても反応に困るし、かといって世界の片隅で細々生きてそうな主人公2人がつらい展開に巻き込まれてほしくもないし……。どう期待していいのかわからない、というのが最初の印象でした。
でもですね。DAHUFAの監督が、謎めいた世界を土台にして「親子愛」をガチで撮ったらどうなると思いますか?こうなります。という風な映画でした。(伝わるのかこれ?)
あと諸々のバランス感覚が相変わらずツボで、やっぱ私、この監督の作品好きだなあ……。

さしあたってまずは、DAHUFAのあのパッサパサな作風を期待すると当てが外れますので注意。登場人物全体がモブに至るまで、全てがちょっとずつ優しい世界でした。まさかと思いますが本当です。
だって柳家の皆さんがみんな擬似親子にすごくまともに接するんですよ。軍人モブでさえ、大谷子が指名手配犯の罪人(冤罪)だから捕まえるし逃げるなら撃つってだけっぽくて、むしろ思いっきり同情してくれる気の良い奴らだし(あの号泣シーン大好き)。さらには一応敵側勢力に属するはずの影之までもが、子どもが巻き込まれないように助けてくれるので、馒头は必要以上にひどい目に遭わずにすみます。
微博の映画公式アカウントで、柳家の皆さんと馒头がワイワイやるショート漫画が読めますが、本編でも距離感だいたいこんなんです。私はてっきり、夜翎缎を巡って主人公勢ともっとバチバチに敵対すると思ってたんですけど、予想を良い意味で裏切られましたね。肝心の夜翎缎奪い合いのシーンは、大谷子がちいかわみたいな形態になってるときに発生したせいで絵面がゆるくて笑ってしまった。
とにかく前作の、社会風刺と皮肉がバッチバチに効いていてかつ容赦無い暴力が秒で発生する世界観とは全く違いました。だいぶ切り替えてきたなーと意外に思いましたが、個人的には子どもは守られるべきだと思う派なので安心しましたし、時折展開される優しい世界には不覚にも和みさえしました。まさかDAHUFAの監督の作品でこんな感想を書くことになるとは……。うーん、新機軸。
まあ当の馒头は、大谷子が心配すぎるために敵地にもおっかなびっくり突っ込んでっちゃうんですけどね。守られる存在が庇護者にお構いなしに危険地帯に突っ込んでいく展開って苦手な人もいるとは思うんですけど、私は不思議とイラつかずに観れました。馒头は助けてもらったらその度律儀にお礼が言える良い子だし、好奇心で敵地に向かうわけじゃない(どっちかというと怖いし嫌だし行きたくないってずっと言ってる)し、大体の行動の動機がずっと大谷子と一緒じゃなきゃやだっていう健気な理由で泣けるしで、そういうヘイトコントロールというか、細かい描写のうまさのおかげかなと思います。史上最もイラつかない子ども主人公と言っていい(大げさ)。
ただし、細かい描写はいいとして、全体のプロットについては改善の余地がありそうではありました。序盤から中盤にかけては船の周りをうろうろする程度で、本格的に船の中の探索が始まるのが中盤以降なため、話の半分近くをたっぷり使ってキャラ達の性格をじっくり掴むことができるのですが、そのぶんプロットが未整理な印象を受けなくもないです。冒険ものっていう先入観が強いと、早く船の中入れや!って思った人もいたんじゃないでしょうか。
他にも好みが分かれそうな要素が色々と入った映画であることは否定できないため、そのあたりが本国での評判がよろしくない要因かもしれません。興行収入がその……ね……。この話やめよう。

柳家のこともうちょっと話したい。子彦と大乐が本当にめっちゃいい人たちでさあ……。
子彦は要所要所でおいしいところ持っていくクールなお姉さんで、大乐は子彦がやらない汚れ仕事をさらっと押し付けられてぶつくさ言いつつ何だかんだやってくれる、ややコメディリリーフ寄りの立ち位置です。この2人が画面にいるだけで安心感すごいんだこれが。ラストの朝日のシーンとかでも、大乐があんなに必死になる義理って特に無いと思うんだけど……あれだけでめっちゃいい人ってわかっちゃうんだよな……。
余談ですが、大乐と影之はDAHUFAでいう太子と小姜みたいな儚い友情(というかぶっちゃけ焼き直しレベルで一致)で結ばれた2人でして、ろふたーで一番カプ系二次創作が盛り上がっているのもこの2人だったりします。まあ結末まで見ればさもありなんといった感じですし、かく言う私もこういうの好き。

キャラについての語りはこのへんにしておいて、次にストーリーについて整理してみます。できてませんけど。
まず、本編のオープニングに使われてた(かもしれない)(←既にうろ覚え)映像を公式がアップしていたので貼ります。
さらに上映開始直後に監督が生放送で裏設定を色々と喋っていたらしく、ファンの方がそれを文字起こししてくださったのがあるのでそれも貼ります。各自読んでください。
これらを踏まえて本編前の流れをまとめてみました。

今作の舞台となる大龙湾は、夜翎鸟の羽根で作った美しい織物が名産の自然豊かな土地だった
戏鼓船も元は興行で来ていた普通の船だった
黑龙軍が夜翎缎のために夜翎鸟を狩り始める
夜翎鸟と隠蛟の力のバランスが崩れ、隠蛟が暴れ始める
隠蛟、戏鼓船を沈没させて潜み、5年後の完全復活の時を待つ
大龙湾は一夜にして荒廃、大谷子は故郷を離れざるを得なくなる
夜翎鸟を失った夜翎人たちが黑龙軍の倉庫に放火、夜翎缎の在庫焼失
放火犯(冤罪)として大谷子指名手配、逃走の最中に馒头を拾う
馒头6歳のときに戏鼓船が出現、本編開始

オープニング以外の情報も少し入れていますが、大体こんなかんじ?大谷子の指名手配と馒头を拾ったタイミングがちょっと違う気もしますが、うまく情報拾えてないです。
うーん、やっぱり5年前に全てが始まったっぽいんですね。あらすじとかで「古代の沈没船」とか書かれてるもんだからてっきり昔からの伝説かと思っていたんですけど、意外と年代近い。また、監督の生放送では、馒头の本当の両親は戏鼓船に乗っていた司祭で、沈没の際に馒头だけでも助かるよう木桶に入れて流したという悲しい裏設定も開示されています。両親の魂も船に乗っていたんだろうか……。登場人物漏れなく全員、戏鼓船に因縁がある……。
つーか全部黑龙軍のせいじゃん(雑)。本編序盤で大谷子が大乐を見るなり殴りかかっていたのってもしかしてそういう?地元民だったから軍に対してずっと根に持ってたとかそういう?初見時、大谷子やべーやつじゃんとか思ってごめん……。
人間の欲望のせいで自然のバランスが崩れて脅威となる的な展開といえばよくあるっちゃよくありますが、映像やキャラや話の運び方に監督の個性が出ていて、まあ独特ですよね。最終的に人類側は人外勢の争いに巻き込まれてもみくちゃにされる一方で、特に説教くささは感じませんでした。ただし隠蛟王の台詞で色々言ってた可能性は大いにある。あのへん台詞が早くてほぼ読めなかったです。隠蛟はまあなんか企んでたんでしょう、だがその他一切のことは分かりません!(チャー研)
とにかく本編のクライマックスでは、なんかもうえらいことになります。それだけはわかった。

クライマックス、人外勢の争いに決着がついたあと、ラストの朝日のシーンです。ここはDAHUFAでいう大护法VS罗丹戦にあたるような、すごい台詞量で押し切って理屈とパッション両方盛りでガーッと魅せてくる、これも監督の得意とするところです。台詞の内容はざっくりとしか理解できていませんが、観ているときの私のテンションを文字にするとこうです。

いけー!諦めるな!やれー!そのまま突っ走れーーー!!!ハッピーエンドまで走り抜けーー!!!!!いいよいいよそのままそのままきてるよ流れきてるよ!!!いけええええーーー!!!!!うおおおおおおーーーーー!!!!!わああああああーーーー!!!!……えっここでエンドロール入るの!?

はい、もうこれは実際に見てもらわないとです。これだよ好みの分かれそうな要素ってのはよ。安易なお涙頂戴ものにしたくないのはわかるけど、幕の引き方もっとこう、あるだろ!?とは思わないでもないよ。決して嫌いなわけじゃないけどよ……。
このあとはDAHUFAと同様、エンドロールとスタッフロールの間にCパートがあり、そこでようやく一段落といった感じでした。

個人的にはですね、作画と演出とキャラ達の魅力については、前作の良かった点から基本据え置きかパワーアップしてるかのどちらかで、相変わらず大好きです。幕引きの弱さとプロットのごちゃつき方がまあ、評判に差し障っても仕方ないかな……といった感じ。
ただ私は、作品のメインテーマ「親子愛」を描くにあたって、最終的にエモで一点突破しようとしたあのラストシーンの勢いが好きすぎて、あれだけで2万点くらい加点したい。幕引きがもうちょい良かったらもう1万点入れたけど……。
前半が割とモタモタしてたのも、登場人物達の関係性とかを群像劇的に描いてからクライマックスの人外勢の戦いでそれらを全て煙に巻くためというか、最終的に子どもが親を想う気持ちを最も純化された状態で観客に提示する効果を狙ったんじゃないかなと思っています。最後に残るのは愛、的な。こういうのは嫌いじゃない。
あと、馒头と大谷子の信頼関係についてもっと説得力が欲しい的な感想を見かけたんですが、私的には作中の描写で説明は十分ついてると思うんですよね。オープニング後に大谷子と馒头が遊んでるシーンや、馒头のあまりにも真っ当な育ち方を見れば、大谷子がどれだけ馒头に愛を注いだか、馒头がそれを受け取ってるかは分かる気がします。

まとめ。
《大雨》、世界観がっちり練り上げたうえで最終的に「愛」の話になるタイプの作品でしたので、私はかなり好きです。
そして、DAHUFAとは方向性の違う新機軸だったため、監督の次作がどうなるかいよいよ予測できなくなりました。今作と同規模の製作ができるかどうかは、興行収入的にはやや暗雲かもですが、個人的には引き続き期待したいところです。感想終わり。

大雨、こんな人にオススメ!
・こどもが守られる優しい世界にいたい人
・それはそれとしてやっぱり容赦無い銃撃戦は見たいよね!な人
・壮大な自然とオリジナリティ溢れるキモいクリーチャーを堪能したい人
・ダメダメだがささやかな良心があるだけの小心者こそ幸せになるべきと思う人

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